2020年09月04日
当院で行われている無痛分娩は硬膜外鎮痛(麻酔)と呼ばれる方法ですが、この方法は無痛分娩にのみ使用されているわけではありません。
私が麻酔科医になった時に初めて見た硬膜外麻酔は手術を受ける患者さまに対して行われていました。陣痛の痛みをゼロにまでしてくれる方法なので、術後の痛みにも有効です。特に呼吸器外科や上腹部手術(胃癌や食道癌など)ではとても有効です。これらの手術(呼吸器外科や上腹部手術)は呼吸によって傷口の痛みが出てしまうため、痛みがあることで呼吸すら辛く、また痰を出すことにも痛みが出るので痰が出し辛く、呼吸器合併症が増加してしまいます。硬膜外麻酔を行い痛みを取り除くことでこれらの合併症を軽減させます。ほかにも腸管を動かす作用もあり、術後の腸閉塞の頻度を下げたり、他にも血栓予防効果や、心血管系への優位性を示すデータがあります。呼吸器外科、上腹部手術にも下腹部手術(帝王切開)、股関節や下肢手術でも使用されますし、ペインクリニック外来では腰痛などの治療にも行われます。
無痛分娩だけでなく、様々な医療現場で幅広く使用されている硬膜外鎮痛についてご紹介させていただきました。