以前無痛分娩で出産された方が産後に出血が多くなり、ご家族の方から『無痛分娩が原因で出血が多くなったのですか?』というご質問がありました。その方の出血の原因は無痛分娩とは全く異なる理由で出血が起こったのですが、無痛分娩と出血が関連していると思われている方もいらっしゃると思います。今回はこのことについてお話をしたいと思います。
無痛分娩を行った人と行わなかった人の出血量を比較したいところですが、当院は圧倒的に無痛分娩率が高く、無痛分娩を行わなかった方がほとんどいないので、同時期の比較をするために、私が以前働いていた他の病院のデータで比べてみたいと思います。そして比較するうえで器械分娩を行ったかどうかが影響するので、そこも比べてみましょう。まず器械分娩なしの場合
分娩方法 |
無痛分娩有/無 |
器械分娩有/無 |
平均出血量(ml) |
経腟分娩 |
あり(18例)) |
なし |
329 |
なし(24例) |
なし |
395 |
このように出血量は無痛分娩の有無であまり変わらず、むしろ平均出血量は無痛分娩のほうが少なくなっています。
次に器械分娩有の場合
分娩方法 |
無痛分娩有/無 |
器械分娩有/無 |
平均出血量(ml) |
経腟分娩 |
あり(20例) |
あり |
514 |
なし(6例) |
あり |
401 |
器械分娩だけで比べると無痛分娩を行った場合出血量が多くなる傾向にあります。ちなみに出血が多くなった無痛分娩の方でも輸血や特別な処置が必要になることはありませんでした。
上記のように器械分娩では出血量は多くなる傾向にあるので、当院では早期から止血剤などを用いて出血量が多くならないように取り組んでおります。
無痛分娩をしたから出血が増えるのではなく、無痛分娩をした場合出血が多くなる人もいるので、しっかりと予防と治療に取り組むことが大切だと考えております。